周瑜嬢

1、君に新たな人生を授けよう(by??)

 後漢の建安十五年、西暦二一〇年、蜀との荊州を巡る戦いに敗れた周瑜は、陣中三十六歳の若さで死亡した。
 曹操、劉備といった海千山千の化け物や、諸葛孔明のような希代の軍師が争う戦国の世に、若き主君孫権を一人残して、周瑜は現世に未練たっぷりに身罷ったのである。
「天はなぜ、この周瑜と同じ世に、あの孔明をも生ませたのか」
 さて臨終の際、策謀のことごとくを見透かされ、企てた暗殺の数々もするりとかわされた諸葛亮に、周瑜はそんな恨み言を吐いたとされる。しかしこの言葉には、蜀びいき、孔明びいきの三国演義の作者、羅貫中の記さなかった続きがある。
「あの、ド変態!」
 我らが周公瑾は、本当はそう続けたのである。
 ……諸葛孔明のような希代の変態が生きる戦国の世に、若き主君を一人残して、周瑜は心配事たっぷりに死んでしまったのである。


――麗しき周瑜嬢、君に新たな人生を授けよう。ぷろでゅーすど、ばい、ド変態。
 夢の中、ひどく嫌味で不快な声を聞いた気がした。
Copyright 2006 Makoku All rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-